XAUI

物理層解析
XAUI (3.125Gbps)


3.125Gbps シリアル・データ・シグナルの捕捉と解析例

(ザイリンクス株式会社製FPGA Virtex- II Pro 使用)
 

ザイリンクス株式会社製FPGA Virtex- II Proシリアル・インタフェースの速度が加速度的に上がっていて、XAUI および次期Serial-ATA などでは3Gbps クラスに達しています。今回、ザイリンクス株式会社のVirtex-II Pro FPGA 評価用プラットフォーム「ML321」を利用してその計測例を示します。
この評価ボードは、2 チャンネルのシリアル・インタフェースのポートを持ち、転送速度や振幅を幅広い範囲で変更ができます。今回は、XAUI インタフェースを対象として3.125Gbps の信号を出力しています。ボードからの差動信号は、+と−の信号をシングルエンド信号2 本で出力し、SMA コネクタが使われています。レクロイ社のシリアル・データ解析装置モデルSDA6000 を使って差動信号の評価を行うわけですが、ボードからの差動信号は、SMA ケーブルをy使ってSDA6000 の2 つのチャンネルに入力します。SDA6000 は、内蔵の高速演算機能を使いチャンネル間の減算をして差動信号波形を作り出すことができます。

アイパターンの評価

演算結果を使ってアイパターンの評価を行ったものが図1 です。ジッタやノイズの非常に少ないアイパターンが見事に描かれています。これは、SiGe 素子を採用したSDA6000 のフロント.エンドの広帯域で高いS/N 比を示しているのと共に、極端に低いジッタ性能を示している。特筆すべきは、SDA6000 が持つ、ソフトウエアによるGoldenPLL の威力です。この図の例では、20GS/s の高速サンプリングで400k ワード(オプションを活用すれば最大96M ワードまで)を一度に取り込み、その信号波形からソフトウェアでクロックを抽出しています。ロングメモリを使って信号の一括取り込みをするので、トリガ・ジッタが無視でき、ソフトウェアPLL なのでクロック・リカバリ・ユニットでのジッタも無視できるため、計測器のジッタを最小化して、信号自身のジッタを明らかにすることができます。

SDA6000を使って捕らえた3.125Gbps信号のアイパターン
図1:SDA6000を使って捕らえた3.125Gbps信号のアイパターン

総合評価

SDA6000 の機能を用いれば、図3 に示したようなジッタ計測を含めた総合評価が簡単に行えます。先ほどのアイパターンと共に、1 ビット内のレベルのヒストグラム、バスタブカーブおよびTIE(TimeInterval Error)ジッタのヒストグラムが同一画面上に表示ができます。また、グリッドの下に示したようにTJ 、RJ 、DJ と言った重要なジッタ計測も非常に簡単に、高精度で行えます。

SDA6000を使って捕らえた3.125Gbps信号の総合評価
図3:SDA6000を使って捕らえた3.125Gbps信号の総合評価

LeCroy XAUI Resources
エレクトロニクス・アップデイト【2003年3月号-01】
「3Gbpsシリアル・データの解析〜SDAシリーズ〜」 - PDF File Format - size 1.8 MB
セミナー資料「高速シリアル伝送信号の品質解析法の紹介」 - PDF File Format - size 8 MB

 

ISI解析

また、図4 のようにSDA6000 の独自の演算により、パターン依存歪、ISI(InterSymbol Interference)を明らかにすることができます。このISI は、3 ビットから7ビットまでパターン長を任意で変更できるだけでなく、特定のパターンの波形だけを抜き出して確認することができます。半導体自身の特性も重要ですが、基板の特性、コネクタやケーブルの特性からISI が生じるケースも少なくありません。従来はランダムなノイズに隠れて確認の難しかったISI もSDA6000 を使えば、非常に簡単に、かつ確実に捕らえることができるので、問題の解決が容易になります。

SDA独自の機能を使ったISI表示
図4:SDA独自の機能を使ったISI表示

ペア内スキュー

また、SDA6000 の機能を用いれば、様々なシミュレーションを行い、事前検証をすることが可能になります。例えば、図5 に示しているのはチャンネル・デスキュー機能を使った例です。本来、この機能は信号のスキューをキャンセルするものですが、ここでは敢えてスキューを擬似的に発生させるように働かせました。この例では、スキューが約150ps となるように調整した結果ですが、先ほどのアイパターンとは大きく異なっているのが分かります。ISI も大きくなっていて、アイの開口率が大きく下がっています。ケーブルや、基板の配線により、このようなスキュー(ペア内スキュー)が発生すると、場合によっては著しく信号品質が損なわれることがこのシミュレーションで分かります。逆に、このシミュレーションで、ペア内スキューのマージンを予め見積もっておくという利用法も考えられます。

ペア内スキューのシミュレーション
図5:ペア内スキューのシミュレーション

フィルタ・シミュレーション

もう1 つのシミュレーションの例は、フィルタのシミュレーションです。図6 は、SDA6000 にDFP2 というデジタル・フィルタ・オプションを使って帯域の低いケーブルのシミュレーションを行ったものです。ローパス・フィルタを用いて帯域を1.5GHz程度に制限していますが、ISI が大きくなり、アイの開口率が大きく下がっているのが分かります。ここでも、ケーブルの帯域のマージンを見積もったり、あるいはフィルタの形を変えてプリエンファシスの効果を予測したりすることも可能です。このように、SDA6000 を使うと、アイパターンがクリアに観測できるだけでなく、他の機器ではできない重要な情報を簡単に導き出すことができます。

DFP2によるケーブル特性のシミュレーション
図6:DFP2によるケーブル特性のシミュレーション