Q1.
WaveShape Analysisって何ですか?
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A1.
Wave=波のShape=形をAnalysis=解析、ということで、文字通り「波形解析」という意味です。もちろん、高速信号を精度良く捕捉して観測し、信号の品質を評価することはとても重要です。しかし、それだけでは今日の高度な要望を満足するには不十分であり、高度な信号解析を行う必要性を表す単語です。 |
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Q2.
なぜ、WaveShape Analysisが重要なのですか?
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A2.
電気信号は、これからますます高速化・複雑化していきます。信号を精度良く捕捉したとしても単に表示するだけでは、信号に潜む問題点を明らかにすることは困難です。
例えば高速インタフェース(USB2.0,
Gigabit Ethernetなど)に代表される高速で複雑な信号は、ジッタ解析などの高度な解析を行わなければ、問題点を抽出できません。 |
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Q3.
X-STREAMって何ですか?
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A3.
高度な信号解析「WaveShape Analysis」を効率良く行おうとすると、いままでのハードウェアでは無理がありました。簡単に言うと時間がかかりすぎたのです。例えば、何万サイクルものクロック信号を取り込んでその周期ジッタをヒストグラム表示すると、1回の演算が終了するのに数10秒もかかっていました。多角的な解析を行うには、異なるパラメータを使った複数のヒストグラムによる同時解析のような、高度な演算を行う必要があります。このために、アーキテクチャを抜本的に見直し、ボトルネックを取り除き、高速の演算処理が出来るようにした新アーキテクチャを「X-STREAM」と呼んでいます。「X-STREAM」により、演算速度は今までの10-100倍になりました。 |
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Q4.
今までの構造ではだめなのですか?
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A4.
効率の良い「WaveShape Analysis」を従来のアーキテクチャで行うのは困難であると、レクロイは判断しました。今までのハードウェアを踏襲すると、どうしてもボトルネックを解消することが出来ないのです。そこで、レクロイで独自開発した技術も含めて、今ある最高の技術を結集しました。その結果、SiGe技術、高速CMOSメモリ、ギガビットイーサネットによる高速伝送、ストリーミング技術、高精度のクロックなどが採用されました。 |
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Q5.
SiGeって何がすごいの?
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A5.
シリコン・ゲルマニウム技術は、IBM が2001年6月に発表した技術です。シリコンに対し少量のゲルマニウムを添加し、純粋なシリコンよりも電導性の高い素材を作り出すものです。シリコンベースのトランジスタのスピードを飛躍的に向上でき、チップの高集積化・さまざまな機能のワンチップ化が可能で、高性能かつ低電力、そして安価なのが特徴です。特に、携帯電話、PDAなどの集積回路の方式として有望視されています。このメリットは、シリコン・ベースの技術であるため現状と同じコストで生産でき、現在使われている製造ラインを利用できる事です。理論上は数百GHzの帯域までの高性能化が可能ですが、設計には優れた技術力が要求されます。
補足:高速半導体としてはガリウム砒素GaAsが有名ですが、直流特性に難があるためオシロスコープのように直流から高周波までの良好な特性を必要とする機器には適していません。 |
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Q6.
なぜSiGe技術を採用したのですか?
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A6.
ひとことで言いますと、シリコン技術を使った製品では性能に限界がきていたからです。「WaveShape
Analysis」を行うには、まず、精度の高い取り込みが必要です。しかし、現在のシリコン技術を使ったIC設計では、市場が要求する帯域・サンプリング速度・精度などに限界があるので、SiGe技術を採用しました。また、SiGeは消費電力も少なく済みますので、筐体の大きさに限界があるデジタル・オシロスコープにも有利なのです。
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Q7.
SiGeは既に他社でも使っているようですが?
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A7.
他社では、フロントエンドのアンプだけに採用されているようですが、レクロイ社ではそれ以外に、トリガ回路とA/D変換器にもSiGe技術を導入し、取り込み時の精度を向上させています。 |
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Q8.
1チャンネル当たり、何個のAD変換器を使っているのですか?
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A8.
SiGe技術を採用した10GS/sを1チャンネルに1個使用しています。例えばレクロイのWaveProシリーズでは、1GS/sのA/D変換器を1チャンネル当たり4つ使用することにより、4GS/sを実現しています。4つのA/D変換器のばらつきは、ソフトウェアによるキャリブレーションで十分抑え込んでいますが、1チャンネル1チップであれば、より精度の高い捕捉が可能です。なお、1チップで10GS/s、6GHzというスペックは、商用のA/D変換器としては世界最高です。 |
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Q9.
デジタル・オシロスコープで、現在の最高のアナログ帯域は?
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A9.
現在6GHzの帯域が最高のスペックで、他社にもあります。しかし、最大48Mポイントのロングメモリを持っているのはWaveMaster8600Aだけです。従ってロングメモリ機としてWaveMaster8600Aの6GHzは世界最高のアナログ帯域と言えます(次項参照)。 |
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Q10.
トリガ回路にもSiGe技術を使っているとのことですが?
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A10.
トリガ回路にもSiGe技術を採用し、5GHz(WaveMaster8500)のトリガ帯域と、2ps未満というトリガジッタを実現しました。 |
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Q11.
トリガ帯域5GHzだと、何が良いの?
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A11.
入力帯域が5GHzとしても、例えばトリガ帯域が3GHzだとするとどうでしょう。このときに4GHzの信号を捕捉しようとしても、オシロスコープでの基本観測である「トリガをかけて画面に波形を止める」ことは自在にできません。それでも連続的な波形であればトリガがかからなくても、適当なタイミングで捕捉を止めれば、画面に波形を表示できます。しかし、稀にしか発生しない急峻なエッジを持つパルス信号を捕捉することは至難の業です。 |
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Q12.
メモリに何か新しい技術を採用されたのですか?
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A12.
A/D変換器でデジタイジングされたデータは、一旦捕捉メモリに書き込まれ、演算や表示に使われます。捕捉メモリへの書き込みが遅いと、マルチプレクサなどを使って速度の調整をしなければなりません。そこでレクロイでは自社で高速CMOSメモリを開発し、10Gbpsの書き込み速度を実現。A/D変換器でデジタイジングしたデータを、ロスなく捕捉メモリに書き込めるようにしました。 |
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Q13.
クロック精度が上がったようですが?
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A13.
「WaveShape Analysis」の代表的な例である、ジッタ解析やタイミング解析を行うには、測定器自体のジッタを減らす必要があります。今までのデジタル・オシロスコープのクロックはリファレンス・クロックから必要なクロック周波数を生成していました。この際、PLL回路を使っています。一般的にPLL回路を用いたクロック回路でジッタを低く抑えるのには限界があります。そこで、PLL回路を使わない手法としてDRC(Dielectric
Resonator Oscillator)を用いて10GHzのクロックを生成し、ジッタを150fs(フェムト秒)以下に抑えました。 |
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Q14.
WINDOWSのバージョンは?
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A14.
WINDOWS 2000 Professional
を使用しています。ご存知のように、WINDOWS
2000はNTベースですので、他のバージョンと較べて安定していますし、マルチ言語サポートにより日本語ヘルプも搭載できました。 |
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Q15.
なぜWINDOWSを採用したのですか?
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A15.
ひとことで言いますと、COM(Component
Object Model)を使いたかったからです。レクロイの資産は、アプリケーション対応のソフトウエアです。ジッタの解析やディスクドライブの信号解析、デジタル・フィルタなどなど高い評価を頂いているパッケージが揃っています。しかしながら、従来からのアーキテクチャではソフトウエアの生産効率もメンテナンスの効率も上がらなくなってきたので、より高度な構造化を目指しCOMという概念を導入することにしました。この決定により、ユーザーの要望に迅速に対応できるだけでなく、ソフトウエアの安定性を高めることができ、ユーザーの開発期間を速めることにつながります。そしてこのCOMをサポートしているのがWindowsであったということです(COMについては別項参照)。 |
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Q16.
CPUは何を使っていますか?
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A16.
Intel社製 Pentium III 800MHzを採用しました。今後も、最新のCPUを選択していきます。 |
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Q17.
CPUが速いから演算スピードが速くなったのですね?
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A17.
それもひとつの要因ですが、それだけが演算速度の速くなった理由ではありません。従来のデジタル・オシロスコープの構造では、いくらCPUを速くしても色々な所にボトルネックがあり、演算速度は期待するほど速くならないのです。(次項参照) |
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Q18.
では、なぜ演算が速くなったのですか?
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A18.
前述の「X-STREAM」を少し詳しく話しましょう。現行のデジタル・オシロスコープのアークテクチャには以下のようなデータ転送上のボトルネックがありましたが、「X-STREAM」ではこれを全面的に見直しました。
ボトルネック1:捕捉メモリからCPUへデータを送る時
今まではパラレルでデータを送っていて、その転送速度は
約12Mbpsでした。他社と比較しても、高速のデータ転送を実現していましたが、高度な「WaveShape
Analysis」を行うには充分では有りません。データを高速で送るには、パラレル転送では限界があるため、ギガビット・イーサネットの物理層を使い1.25Gbpsで転送することにしました。最終的にはPCIインターフェースを通して80Mbytes/sという転送速度になりますが、これは従来品の7倍の速度であり、将来メインボードのインタフェースがPCIより高速になれば400Mbytes/sまで対応できるハードウェアになっています。
ボトルネック2:CPUでの演算時
いままでは、演算メモリにデータを転送し、CPUのキャッシュで演算し、その結果をまた演算メモリに転送することを繰り返していました。この演算メモリとCPUのキャッシュメモリとのデータのやり取りに時間がかかっていたのです。WaveMasterでは、一旦演算メモリにデータを転送した後は、キャッシュメモリにデータを転送し、そのデータに関わる演算をキャッシュ内だけで行い、最終結果を演算メモリに転送する方式を採用しました。この技術により、キャッシュと演算メモリとのやり取りを最小回数に抑え演算の効率化を図る「ストリーミング」技術*を採用しました。
このように、いくつものボトルネックをクリアして、全体のスループットを上げないと、最終的な演算速度は上がらないのです。
また、WINDOWS98とCeleron
の組み合わせでは「ストリーミング」技術が使えません。WINDOWS2000
/ Pentium IIIからこの「ストリーミング」技術を使えます。これが、WINDOWS2000
/ Pentium IIIを採用したもうひとつの理由です。
注:正確には「ストリーミングSIMD(シムド)拡張命令」のこと。
映像や音楽といったマルチメディア系のデータを扱うときは、CPUが同じ命令を繰り返し実行することが多く、命令を出している回数が多いと、演算時間も多くなる。そこで、効率よく処理できるように考案されたのがSIMD(シムド)です。Single
Instruction Multiple Data
の略で、単一の命令で複数のデータの演算をしてしまうことができます。この技術をデジタル・オシロスコープの演算処理に流用して演算速度を大幅にアップしました。 |
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Q19.
タッチパネルからしか操作できないのですか?
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A19.
タッチパネルのOn/Offは前面パネルから簡単に行えます(専用ボタン有り)。操作はタッチパネル、マウス、パネルから操作できます。基本的なデジタル・オシロスコープの操作は、どの方法でも可能なように設計されていますが、基本操作はパネルのつまみやボタン、高度な操作はメニュー・システムを使って行うというコンセプトです。 |
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Q20.
WINDOWSだから、タッチパネルだから使いやすいとは思えないのですが。
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A20.
WINDOWSの操作性とタッチパネルについては、評価の分かれるところです。レクロイでは操作性について、今回の開発でも十分な検討を行い、誤操作についての解析を徹底的に行いました。この解析をもとにWaveMasterでは、タッチパネルで操作することを前提としたプルダウンメニュー、ポップアップメニューを新たにデザインし、WINDOWSのメニューをそのまま流用することを避けました。これにより、メニューの幅や大きさを太い指の人でも気軽に操作出来るようにして、誤操作を防いでいます。また、「コンテキスト・センシティブ」という新たな思考を取り入れたメニュー構造とし、操作性を人間の思考に近いメニュー構造としました。例えば、今までは、「波形を表示する」「立ち上がり時間やパルス幅などのパラメータ測定をしたい」では、「パラメータ測定の画面を呼び出して」「パラメータを選んで」「測定したいチャンネルを選んで」という流れになっています。つまり、プロセスが優先していました。WaveMasterでは、「波形を表示する」「この波形のパラメータ測定をしたい」「パラメータを選択する」というオブジェクトが優先される自然な流れとなっています。ぜひ、実機でその使いやすさを体験してください。 |
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Q21.
COM(コム)とは?
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A21.
COMはComponent Object Modelの略です。Microsoft
社が部品化されたプログラムを作成・利用するための技術仕様。実行プログラムなど特定の機能をもつソフトウェアを部品(Component
Object)として扱え、それら部品同士の組み合わせによりアプリケーションのソフトウェアの開発が容易となります。COMコンポーネントは開発に使った言語やコンポーネントのある場所などに拠らず、どの言語からでも、どこからでも利用することができます。COMを使う利点は次項参照。 |
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Q22.
COMベースにすると何が良いのでしょう?
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A22.
いままでのアプリケーション・ソフトウェアは巨大なジグソーパズルのようなものだと思ってください。ここに新たに機能を追加しようとすると、その周辺のジグソー片を取り出し、新たな機能を組み込み、ジグソー片を元に戻してやる必要があります。しかし、往々にしてジグソーの形はもとの形と異なってしまいます。バグが発生するわけです。そして、これをデバッグするために、関連するソフトウェアを調べるわけですが、非常に時間のかかる作業となり、場合によってはデバッグが困難な場合さえあります。COMベースのソフトウェアは、一つ一つの機能がひとつの箱のようなイメージで、これが整然と並んでおり、関連するソフトどうしが線でつながっているようなものです。従って、新しいCOMベースのソフトを追加する際には、多少の隙間を作ってやって、そこにはめ込むイメージです。デバッグも新しく組み込んだモジュールを見てやれば済むことが多く、ソフトの開発やメンテナンスが非常にやりやすくなります。 |
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Q23.
COMベースにしたのは、レクロイの開発期間を短縮するため?
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A23.
もちろんそれもあります。また、デバッグの容易さが、ソフトウェアの安定性を保証し、万が一の場合にもサービスパックのリリースなどによる迅速な対応がとりやすくなります。また、こうした利点を活用することにより、ユーザの要望を反映したソフトを迅速にリリースし、ユーザのTime-to-Marketを最大限に縮めることに寄与したいというのが、COMを採用した最大の理由です。また、レクロイで対応できないときには、ユーザが組んだソフト(VBS)や市販の数値演算ソフト(MATLABなど)をWaveMasterに組み込んで、カスタマイズすることも容易にできます。 |
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Q24.
MATLABを組み込めるデジタル・オシロスコープがありますが。
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A24.
MATLABを組み込んでデジタル・オシロスコープの内部で走らせることが出来る製品が他社製品であります。こうした製品の利点は、外部にパソコンが必要ではないことと、データの転送にケーブルやインタフェースなどのハードウェアが必要ないという簡便さです。しかしながら、これらの方式は、単に外部のパソコン上のソフトにデータをインタフェースを介して送り、受け取ったデータに対する処理を全て外部解析ソフトを使って行うという基本構成は同じなので、2つのソフトウェアの融和性という意味では不十分な場合もありました。WaveMasterではMATLABやVBS(Visual
Basic Script)で組んだソフトもCOMモジュールとしてオシロスコープのソフトの中に組み込むことが出来ます。この方式では、MATLABで数値演算を行うモジュールを組み、ここで得た演算結果を「表示を行うモジュール」へ送ってやれば、それだけでオシロスコープの画面に演算結果を表示できます。また、MATLABで演算した結果をさらに「ヒストグラム表示するモジュール」へ送ってヒストグラム表示することも可能です。このようにユーザは、既存のモジュールを利用することが出来るので、MATLABで全てのソフトを組む必要はありません。必要な部分のソフトを組めばよいだけですので、ソフト作成のための工数が減らせます。また、画面上で元波形と演算波形との比較も楽に出来ます。 |
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Q25.
カスタマイズはどうやって行うのですか?
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A25.
カスタムのパラメータの演算方法や波形の演算方法をビジュアルBASICを使って記述します。パラメータや演算を選ぶメニューに特別のアイコンがあり、このアイコンを選ぶことでカスタムの演算が実現できます。(XMAPオプション搭載時には、ビジュアルBASICスクリプトが利用でき、MATLABインストール時にはさらにMATLABスクリプトも使えます。)内部の演算は、オシロスコープにキーボードをつなげばその場で編集が可能ですし、別のパソコンで編集したファイルを読み込むこともできます。 |
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Q26.
ハードディスクの容量は?
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A26.
WaveMasterは40GBのハードディスクを内蔵しています。10GBはシステム用に使用、30GBはユーザ用に振り分けられており、波形、演算結果、パネル設定などの保存に使っていただけます。 |
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